中小企業の売上アップに効く!松竹梅の価格戦略
- TADA Masayuki
- 6 日前
- 読了時間: 6分
こんにちは、合同会社多田EC支援事務所の多田優之です。
企業支援機関の皆さま、日々の相談業務で価格設定で悩んでいる事業者の方は本当に多いですよね?そんな時、私がよくお話しするのが「松竹梅の価格戦略」です。
ただし、この話をする前に必ず事業者さんへお伝えしていることがあります。それは「まず原価と売価と利益をしっかりと把握して取り組んでください」ということです。実は思いのほか売れても利益が出ない、利益率がわからないという話を、そこそこの頻度で聞くことがあるんです。今回の松竹梅戦略も、この基本をしっかり押さえた上での話として読んでいただければと思います。
では、心理学に基づいた価格設定手法である松竹梅戦略について、企業支援の現場ですぐに使える活用法をお伝えします。

※Soraで作成
松竹梅の法則って何?なぜ効果があるの?
松竹梅の法則とは、商品やサービスを3つの価格帯(高・中・低)で提示することで、多くのお客様が真ん中の商品を選びやすくなる心理効果のことです。
例えば、お寿司屋さんで「特上(3,000円)・上(2,000円)・並(1000円)」と並んでいたら、つい「上」を選んでしまいませんか?これがまさに松竹梅効果です。
なぜこんなことが起こるのでしょうか。実は人間の心理として、以下のような思考が働くんです:
一番安いのは品質が心配
一番高いのはちょっと贅沢すぎる
真ん中なら間違いないだろう
この心理を上手く活用すれば、事業者は売りたい商品(利益率の高い商品)を真ん中に配置することで、自然と選んでもらいやすくなります。
とある京都の店舗では、この戦略を取り入れて客単価が2割ほどアップしました。お客様も「丁度いい価格帯を選べて満足」との声をいただき、win-winの関係を築けています。

※セミナー資料より
実際の成功事例:地方の小さな店舗でも効果抜群
かなり以前ですが、地方都市のスイーツ店のお話です。この店主さん、元々は600円の単品商品中心で勝負していました。でも競合店も多く、なかなか利益が上がらない状況でした。
そこで松竹梅戦略を採用:
竹(基本):従来のスイーツ 600円
松(高級):こだわりの地元素材(野菜)を使ったスイーツ(トッピングあり) 850円
梅(お手軽):お試しひとくちスイーツ 250円
結果はどうなったと思いますか?
7割以上のお客様が600円の「竹」を選びました。しかも2割ちょっとの方が850円の「松」を注文してくれました。つまり客単価はアップしたのに、お客様は「ちゃんと選択肢がある親切なお店」「選べて楽しい」として満足度も向上したんです。
※データの結果では無く「体感」だそうです
そして面白いことに、お試しの「梅」も女性や小さなお子さんなどに好評で、新規客の獲得にもつながったとのこと。
よくある失敗パターンと対策
ただし、松竹梅戦略には落とし穴もあります。支援現場でよく見る失敗パターンをご紹介しますね。
失敗例1:価格差が微妙すぎる
松600円、竹520円、梅480円のように価格差が小さすぎると、お客様は「どれでも同じ」と感じてしまいます。最低でも2-3割以上の価格差をつけることが大切です。
失敗例2:高級版(松)に魅力がない
単純に量を増やしただけの高級版では、なかなか選んでもらえません。特別な食材を使う、手間をかけた調理法にする、限定感を演出するなど、価格に見合った付加価値が必要です。
失敗例3:売りたい商品を「松」に設定してしまう
実は一番売りたい商品は「竹」に配置するのがコツです。多くの人が選ぶ真ん中の価格帯に、利益率の高い主力商品を置きましょう。
私が訪問した地方都市の雑貨店では、最初この失敗をしてしまいました。一番売りたいオリジナル商品を高価格帯に設定したため、全然売れなかったんです。価格設定を見直して真ん中に配置したところ、売上が回復したとの報告を受けました。
↓違いがわかりにくい「松竹梅」 ※イメージ画像です

※ChatGPTにて作成
今日から実践!業種別の活用アイデア
では、どうやって自分の事業に応用すればいいのでしょうか。業種別にアイデアをご紹介します。
製造業・食品事業者の場合
梅:シンプル包装の基本商品
竹:通常ギフト包装+おまけ付き
松:高級包装+限定商品セット
サービス業の場合
梅:基本プラン(必要最低限)
竹:標準プラン(人気オプション込み)
松:フルサポートプラン
小売業の場合
梅:お試しサイズ・訳あり商品
竹:通常商品・人気商品
松:プレミアム商品・ギフトセット
ここで重要なのは、特に「松」の価格帯には、安易にただ価格だけが高いのではなく、しっかりと価格以上の期待、むしろお客様の期待以上のものを提供するような商品およびサービスを、食品や非食品問わずしっかり押さえた上で取り組んでくださいということを、念押しでお伝えしたりしています。
大切なのは、それぞれに明確な違いと価値を持たせることです。そして、お客様にとって「選ぶ楽しさ」を提供できるような構成にすることですね。
最近では、ECサイトでも松竹梅戦略は効果的です。とある食品系のネットショップでは、商品一覧に3つの価格帯を並べて表示するようにしたところ、平均購入金額が約30%アップしました。
※これだけが原因ではないと思いますが・・

※Soraにて作成
【まとめ】支援現場での伝え方のコツ
最後に、企業支援機関の皆さんが事業者にこの手法をお伝えする時のコツをお話しします。
まず「値上げしましょう」ではなく「お客様により良い選択肢を提供しましょう」という切り口で話すことが大切です。多くの経営者は値上げに抵抗感がありますが、「お客様のため」と聞けば前向きに検討してくれます。
また、いきなり3つ全部を変更するのではなく、まずは現在の商品を「竹」に位置づけて、「松」と「梅」を追加する方法をお勧めしています。これなら既存のお客様への影響も最小限に抑えられます。
実際の数値目標も具体的に示してあげると良いですね。「真ん中の商品が6割、高級商品が2割、お手軽商品が2割選ばれる」というような目安があると、事業者も取り組みやすくなります。
小規模事業者の皆さんは、大手にはできない細かい配慮やオリジナリティのある商品作りが得意です。この強みを活かして松竹梅戦略を実践すれば、必ず成果が出ると確信しています。
企業支援の現場では、「理論はわかったけど、うちの場合はどうすれば?」という質問をよく受けます。そんな時こそ、具体的な事例と一緒にアドバイスできる支援者でありたいですね。
【お問い合わせ】
合同会社多田EC支援事務所 📧 https://www.ectada.co.jp
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